(33) 10000ボルト

目尻と瞳と、ひとりじめ。
 [めじりとひとみとひとりじめ]

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 今日はまた暑いですが、前回予告してしまったので仕方ない。息の抜けない記事を書きます。
 こういう回文が一番扱いに困る、という話をしようと思います。

 2週間ほど前のことですが、「ひとりじめのいちごミルク」という名の500ml紙パック入りの飲み物を見つけました。パックを見ながら、なんとも大胆なネーミングだなあなどと考えていて、自然と「ひとりじめ」という単語に目が行きました。ひとりじめ… めじりとひ… ひ、ひ…と… ひとみと… ひとみと!? 何ー!? と、10秒程度で回文が完成いたしました。

 「目尻と瞳と、ひとりじめ。」
 この回文はなかなか優れています。優れてる点を解説したりするのは下衆、回文で言うところの「すげえ下衆」なんでしょうが、そんなことは気にせず解説してしまいますと、

  • 自然な回文です。意味もすんなり通っています。
  • 短く、インパクトがあります。印象に残るかも。
  • 七五調です。リズムの良さは結構大事なのです。
  • 「目尻」と「瞳」が縁語です。ここは特に重要。

いいことづくめではないか。ああ実に素晴らしい回文だ。惚れますなあ。

 さて、ここからが大事なところです。私は、良い感じな回文が出来たら、その回文がありふれたものかどうか、既存の回文かどうか、をチェックするようにしています。具体的には、単にググるだけ。です。(本当は、主要な回文本や回文サイトにある回文を収集してデータベースを作ったりもしたいんですが、それには気力と時間が必要でして、そこまでは到っておりません。)なぜありふれ具合を調べるかというと、よくある回文を自分が創作したかのように発表して回文知識のなさを露呈したり、盗作の疑いをかけられたりするのを防ぐためです。意気地のない私です。

 「目尻と瞳と…」は、どの程度知られた回文か。とりあえず、私は聞いたことがない。けれど、私が目を通している回文の本は実は10冊にも満たないし、回文ウェブサイトでちゃんと読んでるものは一層少なく、その上一度読んだけど忘れてしまった回文も大量にあるはずなので、自分の回文知識はあてになりません。恥ずかしながら。
 実際、「目尻と瞳と…」は、「ひとりじめ」という単語をひっくり返した瞬間に出来たようなものなので、世の中の誰かが既にどこかで発表している可能性は極めて高いです。今まで自分で見つけてなかったのが不思議なくらいです。

 そういうわけなので、半ば結果は見えてはいるものの、一応Googleで「回文 ひとりじめ」とか、「回文 独り占め」とかいろいろ検索してみます。……
……やはり、見つかりました。見つかったページはこちら
 「目尻とヒゲ、独り占め。」
…うむ。似ていますねえ。「ひとりじめ」をひっくり返した「めじりとひ」の、余った「ひ」の扱い方が違うだけです。ほぼ同じ回文と言ってもよいくらいですが、が、しかし、「ヒゲ」と「瞳」の差は大きいといえば大きい。「瞳」の方が優れているでしょう。多分。さて、どうしたものか。

 回文ではこういう具合に、自分が考えたのとよく似た回文が既に存在している、ということがしばしばあります。今回みたいな、ストレートな回文だと特に。似たのを発見した場合の対処法は、回文を作る人に依ってまちまちだと思われます。ちょっとでも似てると思ったら自分のは封印するとか。自分で考えたことに変わりはないので、気にせず公開するとか。いろいろ。
 私もいろいろ考えましたが、次のようにしようかと思います。

  • 自分のと同じ回文とか、自分のより優れた回文が既に他にあるときは、自分のは基本的に封印。
  • 自分のの方が優れてると感じたり、劣ってそうだけどどうしても公開したい事情があったら、こういう似た回文が別のところにあるんだけど、と断った上で公開。

まあ自然な姿勢ですよね。

 ただ、上にも書いたように、自らの不勉強のため、ある回文がどのくらいありふれてるのかが私には把握できてないので、こういう姿勢を厳密に貫くことは難しい。そんなわけで、お願いなんですが、このブログの回文を見て、む、この回文はあの本に載ってるのと同じですな、とか、あのサイトにあるのの方がいいじゃないですか、みたいな場合には、どんどん教えてくださると大変ありがたいです。「目尻と瞳と…」はあそこで見た、とかね。そういうことは充分にありうるので。
 というのが、長々と書いてきたこの文章で言いたいことでした。

 あ、あと、言うまでもないことを書いとくと、「目尻と瞳と…」の方が「目尻とヒゲ…」より優れてるとは言っても、優れてるのを思いついた自分の方がエライ、などと言うつもりは全くないのでそこんとこよろしくです。ある単語をひっくり返した時点で出来てるような「安直な」回文は、オリジナリティを発揮しようがないので、「誰々が作った」とか言うこと自体おかしな話ですな。そういうわけで、この回文の著作権がどうとか言うつもりも毛頭ありませんです。こうしてブログに載せたのは、回文博物館に回文を寄贈したような、世の中が素晴らしき回文で満たされますように!というような、そんな感じです。


 ところでところで、「ひとりじめ」をきっかけにして知ったブログ『アイ氏とTさん』を少しずつ読んでみましたら、作者のアイ氏さんとは回文の美意識がかなり近いということが分かりました。このへんとか。並んでる回文にも素晴らしいのが多々見つかります。
 「写真違いまして」って姉妹が陳謝し。
とか。
 六分手編みしかけて決断だ。着けてけカシミア手袋。
とか。これはものすごい。
 このブログは巡回決定。