(220) 回文と接続詞

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出る穴(あるいは入る穴)あるで!
[でるあな あるいははいるあな あるで]

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 意味はありません。構造をご覧いただければと。幾何学模様からなる抽象画みたいなもんではないだろうか。違うか。


 「回文には、接続詞や接続助詞が出てくることが稀」ということは何度も書いているとおりです。なぜなのかとつらつら考えてみるに、偶然に大いに支配されている回文の世界においては、論理の整合性を実現するのが難しいからだろう、と思います。
 もちろん、接続詞を使わなくても、互いに関連する名詞や動詞を並べれば、それなりに論理は通ります。ただ、それだけでもけっこう厄介な芸当です。ましてや接続詞を使うのは、接続詞のバリエーションの少なさがネックになって、とてもとても困難です。格助詞についても同様の困難があり、したがって、論理の通った回文を作ろうとすると、どうしても名詞や動詞を細切れにつないだパッチワーク的回文になってしまうのでした(参照:(208))。

 意味も論理も自然で、日本語としても自然な回文、というのが自分にとっての理想形のひとつであるわけですが、それには、接続詞や接続助詞を、もっと意識的に扱う必要があるのではないかと思う次第です。