C-series総集編


 ここここれはジョークですジョーク! アンビグラムでもなんでもありません!


 前回でめでたくC-seriesこと「劇場版名探偵コナンのタイトルを点対称に描いてみるシリーズ」が一区切りつきました。思いつきで始めてしまったのを途中やや後悔した時期もありましたが、結果非常によい鍛錬になりまして、実にやってよかったなあと思います。

 お題を構成する文字がバラエティに富んでいて飽きることなく続けられました。あと、適当に選んだ題材のわりに、難易度が絶妙だったのも幸運でした。決して易しくはなかったけど、しばらく向き合ってると必ずどうにか形になる程度ではあったので。

 見てくださってた皆様に感謝します。多くの方にとって興味のない題材だったはずなのに、思いがけずあれこれ感想がもらえて楽しい日々でした。それと、同じお題で作ってくださったigatoxinさんとkawaharさん、とりわけ12作全部にお付き合いくださったigatoxinさんに、強く感謝します。igatoxinさんの後追いのプレッシャーがなければ、確実に挫折していたでしょう。同じお題で自分のと他人のを比較するのもたいへんよい勉強で、充実した企画となりました。


 さて、せっかく12作が揃ったので、一覧できるように並べがてら、軽くレビューしておこうかなと。これを機会にigatoxinさんとkawaharさんのもご紹介しておきます。お2人は私のを紹介してくださってたんですが、逆はほとんどなかったので。見比べると面白いです。


(12) 戦慄の楽譜 [せんりつのふるすこあ]

 6月17日付。なんだか懐かしい。これがいかにも点対称になりそうな見かけだったがために、このシリーズを始めてしまったのでありました。
 「慄」と「楽」のバランスが難しい。「楽」みたいに左右対称な字は、可能な限り対称に描くのが読みやすいと思うのですけれど、すると必然的に対応する反対側も対称になってしまって、よろしくないなあ。
 igatoxinさんの;アイディアが途方もない。


(11) 紺碧の棺 [こんぺきのじょりーろじゃー]

 6月21日付。無茶ですねえ。でも今見ると、学ぶべきところがなくもない。「棺」の木偏の作り方は、今の自分にはできない気がする。執念を感じる。
 igatoxinさんの;エレガントな対応付けです。私のは、ある大域的対応付け(この字のこのへんをこの字のこのへんと対応付けよう、みたいな)に固執しすぎているために、局所的対応付け(この画とこの画を対応付けよう、とか)に全部しわ寄せが行って大変なことになっています。igatoxinさんのを見るに、もう少し柔軟に考えるべきだったなあと思うのでした。


(10) 探偵たちの鎮魂歌 [たんていたちのれくいえむ]

 6月27日付。全体のまとまりはよい感じ。
 「偵」の人偏をひねり出すのに苦心した。あと、「探」の右下部分の「木」のはらいの処理も悩みました。
 igatoxinさんの;自分のと比べると、大域的対応付けはほぼ同じなのに、局所的対応付けがいたるところ食い違っていることが分かって、興味深いです。


(09) 水平線上の陰謀 [すいへいせんじょうのすとらてじー]

 7月4日付。大域的対応付けの妙。ここに行き着くのは長い道のりだった。「平」と「言」に意外と手間がかかってます。
 アンビグラムにするには、短い言葉より長い言葉のほうが難しいように思ってしまいそうですが、長い言葉のほうが大域的対応付けに自由度が出るので、一概にどうとは言えないように思われます。C-seriesは適度な長さの言葉が多かったのが、最後までやり通せた理由のひとつかなあと。igatoxinさんが、漢字2字の熟語ばっかりの"S-series"というのを一時期やられてたんですが(これなど)、ああいうのの方が難しそう。
 igatoxinさんの;自分が最初にやろうとして挫折した大域的対応付けなのでありました。


(08) 銀翼の奇術師 [ぎんよくのまじしゃん]

 7月11日付。アイディア勝負。今思うと、これだけルビつきでほかとスタイルが違うのが少々もったいなくもあります。
 ど真ん中の「奇」は悪くない気が。「翼」はよくないねえ。仮にこれで読めても、もう少しもとの字に忠実にしないと、やっぱり気持ち悪いなあ。
 igatoxinさんの;この余りの処理はigatoxinさんにしかできない。


(07) 迷宮の十字路 [めいきゅうのくろすろーど]

 7月13日付。読めないですよね。「迷」とか。
 黒四角で無理を処理してるのは、ちょっと気に入ってます。無理を統一的に処理するってのはなかなか大事なことだと思われる。
 igatoxinさんの;想像だにしない方向に。
 kawaharさんの;これもまた別のすごい方向に。


(06) ベイカー街の亡霊 [べいかーすとりーとのぼうれい]

 9月9日付。前回のから間空きすぎ。実はこの対応付けにはすぐに行き着いたのですが、さすがにこれはよくないだろうと、より良い対応付けを求めて2ヶ月さまよった挙句、結局何も見つからず、元のへ戻りました。
 初めは横書きなのに、最後には縦書きになっているという、不思議な字の並び。「霊」は、どうなんですかね。何も知らなくて読めるものなのかどうか。
 igatoxinさんの;天井に書くと、寝るときうなされそう。


(05) 天国へのカウントダウン [てんごくへのかうんとだうん]

 9月21日付。12作中もっとも納得がいってない。これはどうしたものなのか。
 「国」をいかに処理するかがキーだと思うんだけど、なんにも思いつかなかったので、強引に解決した次第。あと、「国」のせいで文字の大きさのバランスがまったくとれないので、いっそのこと文字の大きさは全部がたがたにしたらいいんじゃないかと、こういう見た目になったんですが、余計に酷くなった気がしますよ。
 igatoxinさんの;「国」の反対側が気になる。でも綺麗。
 kawaharさんの;「国」の反対側が気になる。真ん中がよいです。


(04) 瞳の中の暗殺者 [ひとみのなかのあんさつしゃ]

 10月10日付。ある大域的対応付けを諦めて別のに移ったら、ことごとく局所的対応付けがうまくいくようになりました。これはもともとアンビグラムにするためにある言葉なんじゃないかと勘違いしそうな気分でした。もう少し見た目が綺麗になるように微修正できれば、よりよかったなあ。
 「の」が2個出てきますが、複数出てくるパーツは可能なら同じ形に描きたいところで、それがちゃんと実現されたのもラッキーでした。
 igatoxinさんの「瞳」の目偏の作り方が驚愕。


(03) 世紀末の魔術師 [せいきまつのまじゅつし]

 11月2日付。これは苦労した。どう頑張ってもいろいろと余るので、余りをいかに処理するかに全力を傾注しました。「己」が無理やりです。「術」はそのぶんけっこういいと思う。
 「銀翼の奇術師」と3字もかぶってるのに全然違う風にせざるをえないのが、アンビグラムの楽しいところですね。
 igatoxinさんの;細かい対応付けの差を見比べると発見があります。糸偏の作り方が流石だと思いました。


(02) 14番目の標的 [じゅうよんばんめのたーげっと]

 11月16日付。中央部は読みにくそうだ。
 最初は、「14」とか入ってていかにも作りにくそうだなあと思ってたんですが、いざ作ってみるとあっさりできました。逆に、一見簡単にできそうなものが、作り出してみると激難ということもあって、何事も実行しないと分からないものであるなあ。
 igatoxinさんの;そっくりです。


(01) 時計じかけの摩天楼 [とけいじかけのまてんろう]

 11月25日付。赤にするかオレンジにするか迷った。どうでもいいか。
 「摩」はこれだけ崩しても読めますよね。魔術師の「魔」といい、気難しそうな見た目でありながら、付き合ってみると案外すなおな面々。
 「楼」が微妙です。読めますか否か。
 igatoxinさんの;そんな手が……


 順番に見ていくと、上達具合が分かる……ようなことはまったくありませんが、たぶん、対応付けの技術とかは多少身についた、はず。それと、無理そうでも根気よく考えていると案外どうにかなる、ということが実感されたのは、今後アンビグラムに臨む上で大いにプラスになりそうです。

 igatoxinさんと話し合って、次に取り掛かるシリーズがすでに決まっているのですが、これがC-seriesよりさらに難しそうなのですよね。大丈夫でしょうか。C-seriesにもまして完成に時間がかかると思いますが、何とぞよろしくお願いします。