(94) 字数の偶奇3

都民会館「水戸」
 [とみんかいかんみと]

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 4月25日分を書いていますが今日は4月29日です。だんだん追いついてきました。


 (89)(92)で、回文が奇数字になりやすい理由を、回文の中央部分を補間するときの状況から考えました。でも、いきなり中央部分から作り始めた回文もあります。たとえば
  (52) 無塩バター・β版(M)
は「β版」から作り始めたのですが、中央の一字は「β版」の「べ」なので、この回文を作る過程には、中央部分を補間するステップが存在しません。そういう場合でも、やっぱり奇数字になりやすいのだ、ということをこれから見てみたいと思います。

 まず、少し特殊なパターンとして、次のようなものがあります。
  (9) 「ないない探検隊」無いな。
これは「探検隊」からスタートしたのですが、この言葉が(92)の用語でいうところの「ABCBA*」であるところに注目して、「ABCBA」部分を真ん中において作ったものです。同じ系統のものに
  (8) ダンク! いっせーのーせっ、行くんだ!
などがあります。

 ところで、「ABCBA*」みたいな、回文的な部分(ABCBA)を含んでいる語を回文に組み込みたい場合、その部分を中央におくことで、回文が作りやすくなります。たとえば「探検隊」を使って中央部分から回文を作ろうとすると、その配置の仕方は
  ……い探検隊……
  ……いたんけん探検隊……
  ……いたんけんた探検隊……
  ……探検隊たんけんた……
  ……探検隊いたんけんた……
があるわけですが、ABCBAを中央において、余った文字を最も少なくした
  ……い探検隊……
がいちばん作りやすいと思われます(それに囚われすぎるとよくないですけどね)。

 さて、(92)の結果を信じると、回文的な部分は奇数字になっていることが多いので、これと上記のことを考え合わせると、回文的な部分をもつ語から回文を作る場合に限定すれば、奇数字のものができやすい、ということになります。回文的な部分をもつ語は少数派のはずですが、「あえて回文的な部分をもつ語を見つけ出してきて回文にする」という作り方もよく行われていると思うので、これは奇数字回文が多数になっていることにそれなりに関与していると思われます。

 では回文的な部分を含んでいない場合はどうかというと、それでも話は同じでして、たとえば「回文」を使って中央部分から回文を作ろうとすると
  ……んぶい回文……
  ……んぶいか回文……
  ……回文ぶいか……
  ……回文んぶいか……
の4パターンが考えられますが、語頭の「か」や語末の「ん」をダブらせて、余りの字数を少なくした方が一般に作りやすくなると考えられますから、やっぱり奇数字の回文ができやすいと言えます。

 まれに、ある語をひっくり返したときに、語頭や語末をダブらせない方がうまくいきそうなパターンも出てきます。たとえば「悟った」をひっくり返すと「たっとさ」となりまして、これは「……悟ったとっさ……」とか「……たっと悟った……」よりも「……悟ったたっとさ……」とか「……たっとさ悟った……」の方が収まりがよいですね。このまま作ると偶数字になるはずです。でも、自分がこういうパターンに遭遇すると、中央部分の自由さを活かすために、「たっとさ……悟った」と2語を両端におくことが多いので、結局奇数字に落ち着いてしまいます(see (10))。偶数字にはなかなかならんのです。


 と、回文が奇数字になりやすい理由をあれこれ考えてみましたが、どれも決定力不足な感がありますねえ。結局なにが理由なんですかね。よく分からん。